小さいアコースティックギターは子供用？

東京は渋谷にあります。個人レッスン専門のギター教室。T’ｓGuitarSchoolです。

●今回は小さいアコースティックギターについてです。小さいといっても本当にミニサイズに見えるものです。少し小ぶりであるとかいったものは「小さい」とは呼びません。この小さいアコースティックギターを子供用として扱う場合があるのですがそういう意味でもない場合があります。本来、ギターというものは大きいものです。特にアコースティックギターは厚みがあります。それほど重くはないのですがそれでも持ち歩くとなると手荷物の様には思えません。エレキギターは厚みがない分だけコンパクトのように思われますがかなり重たいものです。ですのでどちらも大きな荷物になると思います。そう言った意味ではアコースティックギターの小さいものは持ち運びに便利というのがもともとのコンセプトでもあります。ちょっとしたイベントで少しだけギターを弾きたい。そのような場合には小さいアコースティックギターは便利でした。しかし音が小さくなります。普通のサイズですら、野外では音が聞こえない場合が多いのですがサイズを小さくしてしまえば何を弾いているかわからない場合もあるくらいです。エレキギターはアンプが必要になります。ですのでエレキギターの小さいサイズは殆ど見かけることがありません。持ち運びに便利だからといって、結局はアンプ、ミキサーなどの設備が必要な場所にしか持ち運べない、それならフルサイズで十分ですね。このように小さいギターはあまり重宝されないことが多いです。また、本当にミニサイズになってしまうと逆に大人では持ちにくいものです。弾き心地があまりよくなく、ショートスケールといったものが限界です。それ以上ネックが短ければ演奏はしづらいものでもあります。

・ミニギターは子供用？

持ち運び、子供用など小さいとそれはそれで用途がありそうなものなのですがアコースティックギターであってもあまり見かけることがありません。とてもたくさん売れるのであればよいのですがどうしても需要は少ないです。T’ｓGuitarSchoolでも小学生の生徒さんが増えました。これは世代の問題が大きいと思います。私がギターを始めたころ、まだエレキギターもアコースティックギターもそれほど多くはなく、また中学生の買い物にしては高価でした。親に買ってもらうことができる値段のものがあまりありませんでした。そして何より、親世代が「ギターを習わせる」ことに抵抗、違和感があった世代です。しかし現在、小学生、中学生の親御さんたちになりますとすでに「ミスチル」「スピッツ」の世代ですね。「ギターを習わせる」という発想が普通にある世代です。そこで習い事の一つとして「ギター」が挙がるようになりました。また、学校などの発表会でも「ギター」はほかの楽器と違い、演奏できる人が少ないのでやはり受けます。昨今、そのような時代の移り変わりからミニギターは子供用ギターになってきたのかもしれません。

・ミニギターは少ない

ここでいうミニギターはアコースティックギターの話です。エレキギターの小型のものは本当に需要がないと思います。過去に「ゾウサン」と呼ばれる動物の象のようなエレキギターが売れた時代があります。しかしこれも一時でした。このギターは電池があればスピーカーが内蔵されておりアンプのない状況でも演奏が可能です。ですが電池切れも考えられますね。エレキギターは本体の次に重要なのがピックアップという音を作るパーツです。そしてアンプの性能。このような電気的な音がメインの楽器なのですが簡易的な内蔵のスピーカーから出る「ゾウサン」のサウンドは本物のエレキギターとは程遠いものに感じました。ですので、やはり余興のような時以外は需要がなかったように思われます。その意味ではアコースティックギターのほうがまだ需要があるように思います。過去にはマーチンというあの大メーカーですら「バックパッカー」といった持ち運びに便利なサイズのギターを販売したくらいです。ただし、マーチンの「バックパッカー」は決して安いものではなかった記憶があります。このようにミニギターはアコースティックギターですらあまり需要がありません。そうなりますと需要がないから作ったとしてもそれほど多くの本数を作ることができません。アコースティックギター作る場合、ほとんどが既に木材店ですでにカットされた木材を使用します。ですので子供用のアコースティックギターのカット材は殆どないのではないでしょうか。そうなりますとフルサイズ用のカット材を小さく切るだけになり、決して木が小さいからと言ってコスト削減にはなりません。またミニギターのカット材があったとしても需要がそれほどにないため、良い木材のものは少ないでしょう。それほど高い値段を付けれないミニギターに対して高級な木材をあつらえてもミニギターの値段そのものが安いのでやはりそういった方向には向かないと思います。マーチンの「バックパッカー」がそれほど安くない理由でもあります。それでも大手メーカーならミニギターを大量に作って売ることができるでしょう。しかしそれ以外の小さなメーカーはカット材そのものをフルサイズでしか用意できないのでやはりミニギターは少なくなっていします。また決して安く製作できるわけでもありません。ギターが小さいからといってボンドが固まる時間は同じです。確かにフレットの打つ本数は多少少なくなるかもしれませんがそれでも30分も短縮できるわけではありません。またネックが逆に小さいことから、作業がやりづらいことも多くなります。パーツもミニギター用のものはあまり聞いたことがありません。私の知る限りではほとんどが従来のパーツです。塗装に関しても同じです。塗る面積は確かに小さいのですがそれでもどれだけ時間が少なくて済むかは疑問です。そしてなにより、アコースティックギターの製作費の殆どは人件費です。木工品は原価が一割といわれているくらい、木材は安いものです。木は動くものです。乾燥、多湿などで反ったり割れたりもあります。そのためしっかり乾燥した木材が大切になるのですがそれは小さいギターと大きいギターでは変わりません。木材が乾燥するのに1年かかるなら、それはどちらも同じです。結局のところ、小さいアコースティックギターとフルサイズではほとんどコストは変わらないことになり、どうしても大手メーカーのような力のあるメーカーでしか扱えないのでしょう。そのため機種、メーカーもやはり少ないということになります。

・小さい、弾きやすい？

稀に女性の方、特に初心者の方がミニギターを選ぶケースが多いです。これはそこまでミニではないのですがそれでも少し小さすぎるサイズです。これは子供用ギターとは言えないのですがそれでも小さいではなく小さすぎるのはよくはありません。私はアコースティックギターのサイズの適正を聞かれたら「小さい、短い鉛筆」を例えに挙げています。小さいからといって手や体が小さいからと言っても限度を来れる小ささは逆に持ちにくい、弾きにくいになります。「小さい、短い鉛筆」はまさしくその例えです。私たち大人のサイズ、これは適正なのです。確かに女性であっても外国の人は大きい人が多いです。だからといって東洋人の私たち、特に女性にとって今ある適正サイズが大きいわけではありません。T’ｓGuitarSchoolでは小学四年生くらいからはすでに大人と同じフルサイズで練習をしています。教室のレンタルのギターも同じサイズです。しっかりとした基礎のフォームがあればギターの大きさはさほど苦になるものではありません。むしろT’ｓGuitarSchoolでのレンタル用のアコースティックギターはとても高価で良いものでもあるので実際には弾きやすく、音も出やすいのです。体の大きさ、手の大きさをハンデにしない良いギターです。小さい、そして普通の価格のギターよりも教室のアコースティックギターのほうが音が鳴る、こんな経験たくさんあります。アコースティックギターのサイズは弾きにくさと思っている人が多数なのですが講師経験の長い私たちからすればそうではありません。ただどうしても小学四年生以下は苦戦するサイズでもあります。しかし自分は女性だからといって通常よりも小さいボディや細いネックのアコースティックギターを購入するのは間違いです。ではどうして通常よりも小さいアコースティックギターがあるのかというと意味はあります。やはりサウンドだと思います。通常のサイズよりも更に違うサウンドが欲しいとなればやはりボディサイズでサウンドは変わります。エリッククラプトンのアルバム「アンプラグド」。こちらは電気音ではなく生ギター、生楽器だけで演奏した企画のアルバムです。アコースティックサウンドが魅力のアルバムなのですがエリッククラプトンの使うマーチンはどちらかというと小さめです。もちろん大人としては適正なサイズです。いわゆるドレッドノートタイプではありません。確かにエリッククラプトンはとても大きな人ではありません。しかし手は本当に大きいですね。ですので指が届かないから、大きすぎるからドレッドノートタイプを使わなかったわけではなさそうです。やはり少し小ぶりのボディから出る中域のしっかりしたサウンドがあのサイズのギターを選んだ理由ではないでしょうか。

●結論は小さいアコースティックギターは子供用ではなかったと思います。もちろん子供用に使用することは可能なのですがどうしても大人が使うフルサイズよりは内容が良くないものが多いです。それは上記にもあるように小さいからコストを落せる訳ではないことが理由だと思います。子供用のギターで最初はお子様は練習しても良いかとは思いますがいずれは買い替えることを前提にして最初の入門用としてほしいですね。

参考にして下さい。よろしくお願いします。