東京は渋谷にあります。個人レッスン専門のギター教室。T’sGuitarSchoolです。
●今回はアコースティックギターのヘッドを詳しく書いてみたいと思います。実は結論を言えば全くどれも同じです。ヘッドの形状で特に何か問題が起きることもありません。しかしそれならどうして複数の形状があるのか。アコースティックギターは楽器である以上、全て何等かの意味があります。しかし弦楽器が発明され、改良さえ、現在では化学の力もあります。例えば昔は接着にニカワというものを使用していました。こちらは接着剤なのですが熱に弱く溶けてしまうこともありました。しかし今では音に何も影響しないボンドがあります。そして接着力も問題ありません。アコースティックギターの接着は主に木と木になるので木材に相性のいいボンドが必要なのですが、現在ではボンドが溶けて困るといった話は聞いたことがありません。またこのボンドはすぐに剥がれてしまう、そのようなボンドもまた聞いたことがありません。このように時代が進むにつれ研究はされているので昔の作り方が必ずしもいいわけではないのです。その昔、アクリル、もしくは鉄、合金のようなものがない時代、また高価で弦などに使えないといった時代は全てガット、豚の腸を使っていました。現在でも販売はされているようですがよほどのこだわりのサウンドがない場合、使われることはありません。しかし化学が進むにつれ、アクリルとなりました。しかしこのアクリルを使った弦でもやはり耐久が悪いなどから合金での弦になります。この時の懸念はやはりネックの反りです。木が徐々に折れ曲がるのではないか、もしくは反ってしまうかもしれない。こんなことだったと思います。しかし現在においては一番大きいコントラバスも鉄弦です。さらに通常は4本ですが5本もよく見かけます。一番太い弦を5本張っても現在では問題ありません。このように弦一つとっても進化はしています。ですのでヘッドの形状でチューニングの安定が著しく変化することはまずあり得ません。ここでアコースティックギターのヘッドを紹介してみます。
・スロッテッドヘッド
こちらの話も過去に書いてきました。現在では全く問題がありません。これは弦をヘッドの中心で巻くことになります。弦からヘッドまで限りなく真っすぐに弦を張ることができます。この弦は必ずナットを通さなければなりません。ナットで溝を作りそこからヘッドを曲げてナットに力をかけます。そうすることによりナットからヘッド、ナットからブリッジは別の力になります。そしてこのナットが防波堤の役目を果たします。弦の振動がヘッドに流れるとギター本体のボディには振動が伝わらないため、アコースティックギターの音が悪くなります。これは弦楽器全て基本的な構造なので初心者の人も知っておいてほしい仕組みです。弦振動はナットでぶつかり、その波はボディに帰ってきます。そこから反射を繰り返して音がでるのがアコースティックギターの音の出る仕組みです。そして弦楽器は全てこの仕組みで音が出ています。それが正しく伝わらなかったり、また逃げてしまうと音は悪くなります。このスロッテッドヘッドの良いところはこの点にあります。弦が従来のアコースティックギターのように両側にはじき出される形は実際には弦のテンションとして、望ましくはありません。
・現在のアコースティックギターのヘッド
アコースティックギターヘッドはこの形がほぼ定番になっています。スロッテッドヘッドのように弦をヘッドの中心に持ってくるのではなく端にㇵの字に振る形です。上記にあるようにこのヘッドでは弦のテンションを真っすぐにできず横に反れるため正しくないとされています。しかし現在のところこのタイプのヘッドで強度の問題、チューニングの問題などなどは聞いたことがありません。むしろ多少の力のかけ具合があったとしても製作には楽でもあるので、これでいいのではないでしょうか。強いて言えばヘッドの重量が重くなりますがそれでもヘッドが演奏中に下がってくるような大きな重量にはなりません。多少のことだと思います。逆にどうしてクラシックギターがスロッテッドヘッドなのかというと、弦がアクリルなためどうしても巻く量と太さが必要なためスロッテッドヘッドのような弦を巻くスペースが多いタイプしか作れないのでしょう。一般的なペクでは巻くことができないからです。このヘッドの形状もまたアコースティックギターのような鉄弦を張る恩恵だとも言えますね。少し手間がかかるとすると着板といって化粧板をヘッドに張ることになります。これによりヘッドロゴなども楽に入れることができます。またギブソンのアコースティックギターのように黒でべた塗をしてしまいます。これもロゴの白蝶貝などが入れやすいです。違いは着板は張り付ける手間がかかる反面、大抵はボディと同じ茶色のためボディの色とマッチします。マッチングヘッドといいます。しかし黒で塗りつぶしてしまうとヘッドは黒、ボディはナチュラルとギターの見え方は変わります。もちろん好みの世界でもあります。ちなみにマーチンは着板、ギブソンは黒塗りといった伝統的なものがありますね。マーチンはヘッドの上部がほぼ真横にカットされるのですがギブソンは装飾的なものが殆どです。マーチン、ギブソン以外のメーカーでこのどちらかのヘッドを採用しているなら、そのメーカーはマーチン、ギブソンのどちらかのギターを踏襲していると思います。もちろんデザインのものなので好みの方で構いません。最近ではオリジナルヘッドが多く見られます。実は本来ギターのヘッドにロゴが入ることはありませんでした。ですのでクラシックギターのヘッドには基本的にメーカーロゴはありません。サウンドホールからのぞいた場所にシールを張り、そこにメーカーや製作家の名前が書いてあるものが一般的でした。アコースティックギターになりロゴが入れやすくなりました。なによりクラシックギターだけではなく弦楽器はもともと個人で作るものです。マーチンやギブソンのようなメーカーが作っているものではありませんでした。もちろん誰の製作かは大切なのでボディの内部にシールなどで分かるようになったいたのです。ギターという楽器がメーカー製作になったがゆえ、ロゴをつけるという発想も生まれたのでしょう。そこからメーカーや製作家を明示するためオリジナルの形のヘッドも最近ではよく見かけます。そしてやはり弦は真っすぐであるべきという考え方から最近ではヘッドを小さくしてなるべく真っすぐに弦を張ることができるヘッドもよく見かけるようになりました。ヘッドを小さくしてしまえば、強度の問題も懸念されたのでしょうが、実際はヘッドを小さくしてヘッドが割れた、ネックが反ったなどは聞いたことがありません。初心者の方がアコースティックギターの購入でもし迷われたら参考にしてみてください。最近のオリジナルヘッドは限りなく真っすぐに弦が張られています。ただしデザイン上の弱点があります。カッコ悪く見えるのです。ボディの大きさにたいしてヘッドが小さいとどうしても不細工に見えやすいのです。この点もあってなかなか真っすぐに弦を張れるヘッドは少ないと思います。実際エレキギターの場合もボディを小さくしています。真っすぐに弦を張っているフェンダーのストラトキャスターよりもヘッドのペグが3対3であるギブソンのレスポールのほうがボディは小さいです。大きくシェイプが違うので比べることもなかなか難しいのですが。
・6連続ペグのヘッド
こちらはごく稀に見るタイプです。根本的に6連続のペグのヘッドはエレキギターから始まりました。そしてそれはテレキャスター、ストラトキャスターが代表です。どうしてこのタイプが可能になったのかというとボディとネックを平行にできるようねじで止めるボルトオンを採用したからです。レスポールタイプ、もちろんアコースティックギターもネックとボディには角度が必要です。特にアコースティックギターはブリッジをボディの上に載せることになります。そうするとどうしてもボディに対してネックに角度が必要になります。ただし、これが本当の弦楽器の構造です。フェンダーが開発したストラトキャスターのほうが異例だったんですね。それでも可能になったのはボディに空洞を作らず、1枚の板で形成し、かつ音はピックアップで拾ってアンプから音をだす。これが可能になったからこそ、ボディとネックをねじで固定できたのですね。実際にはフェンダーも完璧に平行にはなっていませんがそれでもかなり平行に近いです。ですのでアコースティックギターのような構造は根本的にペグを6個連続で作ることが難しいとなります。もちろん現在ではできないことでは決してありません。しかしそれには専用のボディ、ブリッジ、また角度と色々従来のボディなどではできないことも多いと思います。そのため、同じ形で大量に生産しているメーカーにとってはリスクです。また35年間ギターを弾いてきた私の感想としましては、なかなか新しいタイプのギターは人気がありません。アコギといえばこれ!といった感じがとても強く、また従来通りのデザインのほうがやはり人気になる傾向にあります。変わったタイプのギターに人気がでるとしたら、それはミュージシャンが使って人気が出るケースです。この6連続のペグのアコースティックギターがまだまだ少ない理由でもあります。
●このように一見デザインだけだと思われているアコースティックギターのヘッドにも色々と理由があるんですね。しかし実際にはもうどれでも機能は変わりません。初心者の方がヘッドのデザインで迷ってしまったらもう好きなものを選べばいいのではないでしょうか。
参考にしてみてください。よろしくお願いします。