東京は渋谷にあります。個人レッスン専門のギター教室。T’sGuitarSchoolです。
●今回はアコースティックギターとクラッシックギターの違いについてです。実は勘違いをしてアコースティックギターを弾きたいのにクラシックギターを間違えて初心者の方は購入してしまいます。代用できるのかというと全くそうではありません。しかし見た目ではなかなか区別がつかないのも初心者なのでまずは購入前に相談をしてほしいと思います。ではどれだけ実際は違うのか。
・ヘッド
クラシックギターはスロッテッドヘッドと呼ばれるものがほとんどです。ヘッドの中心に弦を巻き付ける形になります。ですのでペグボタンもヘッドの横ではなく後方にあるのも特徴です。そしてヘッドにペグを巻き付けるのではなくペグから延びるシャフトに弦を巻いてゆきます。それに対してアコースティックギターはペグに直接巻き付けることになります。本来弦楽器のほとんどはこのスロッテッドヘッドになります。何故かアコースティックギターからこのヘッドは無くなりました。本来なら実はスロッテッドヘッドの方が理想です。弦が限りなく真っすぐに巻かれることになり弦のテンションが正しくかかることになります。それに対してアコースティックギターのヘッドは横に弦がふられてしまうため正しくテンションがかからないと言われています。しかしここで断っておくと、スロッテッドヘッドからアコースティックギターのようなヘッドに変わったからと言って劇的にチューニングなどに問題が起きたということは聞いたことがありません。全く問題なくアコースティックギターのヘッド形状で構いません。ではどうしてスロッテッドヘッドが採用されていたのかというとまず、ペグの形状がそれしか存在していなかったことが挙げられます。そして理想でもあります。しかしどうしてそれならアコースティックギターのヘッドが生まれたのでしょう。最初はアコースティックギターもスロッテッドヘッドだったのでこの点はご注意下さい。レプリカのようなもでるならアコースティックギターでもスロッテッドヘッドが存在します。アコースティックギターはギターに最初に鉄の弦を採用しました。そして反りには弱いネックの長さも特徴です。ネックを数センチ長く、更に鉄弦を張るとネックがどうなるか分からなかったということもあったのでしょう。弦を真っすぐに張らずに横に振ることによってネックにかかるテンションを軽減したかったのかもしれません。またペグの形状からもそうせざるを得ない状況でした。もし通常のペグで弦をペグの真ん中に集めるならとても小さいヘッドになります。逆に大きなヘッドならペグのシャフトは届きません。このような色々な理由があったように思えます。ただしもう一度書きますが現在ではスロッテッドヘッドではなくても全く問題はありません。
・ネックの長さ
上記に少し書いたのですが根本的にネックの長さが違います。大きく違うのはネックのボディとのジョイントの位置です。クラシックギターはネックが12フレットの部分でジョイントされます。しかしアコースティックギターは14フレットにジョイントしているため左に長くなりました。もちろんこの長さは僅かではあります。ギターのネックは長くなれば長いほど反りやすくなります。コントラバスやチェロもネックは長く見えるのですが実際にジョイントから上はそれほど長くありません。意外にもアコースティックギターは長いネックの部類になります。なぜ、わざわざクラシックギターよりネックを長くしたのかは定かではありません。しかしネックを長くすればその分、ピックや指で弾く倍音の位置は変化します。クラシックギターはネックが短いため、ボディを体の中心に持ってきます。そうなると自然に右手は倍音の位置になります。アコースティックギターは座って太ももの上に置くスタイルになるため、体の中心から右がボディ、左がネック。このようなスタイルからネックは体に近い位置になったことがネックを長くできた理由なのかもしれません。ですのでアコースティックギターをクラシックギターのような弾き方をする人を稀に見かけますがフォームとしては間違いです。それではネックが遠くなりすぎてコードは弾きにくくなります。また右手の倍音の位置も変わることになりお勧めはできません。実はこのようにネックの長さが違い、基本のフォームも変わるため、クラッシックギターでアコースティックギターのような奏法はできないと考えています。
・ボディの違い
クラッシックギターの方が小さいボディが多いです。もともとがクラッシックギターではあるため、アコースティックギターが大きいボディとも言えます。クラッシックギターは体の中心にボディを持ってくるためあまり大きなボディが作れなかったのかもしれません。しかし太ももに乗せて弾くアコースティックギターの奏法ならある程度ボディを大きくしなければ支えることができない、そんなことからボディは大きくなったのかもしれません。またサウンドホールも実際はアコースティックギターの方が大きいのも特徴です。ですので上記にもありますようにクラッシックギターのスタイルでアコースティックギターはとても弾きにくいものでもあります。また、一般的にはボディが大きいほうが音量が出るのでボディを大きくした理由なのかもしらません。クラッシックギターは基本的には独奏です。アンサンブル、いわゆる多人数での演奏よりも一人が多いです。しかしアコースティックギターは歌の伴奏などの役目で作られたため音量を稼ぐことが主体になったのかもしれません。そして現在でもアコースティックギターは伴奏に向いている楽器として扱われます。独奏もあるのですがそれはアコースティックギターの仕様を変えなければなりません。例えば従来のネックより細く最初から作る、などです。そう言った目的で作られていない限りはアコースティックギターは伴奏用です。実際にはクラッシックギターサイズのアコースティックギターもあるのですがやはりお勧めはしません。小さいから持ちやすい、それは違います。最低限のサイズならよいのですがクラッシックギターサイズだと少し小さすぎる気がします。私が生徒さんに例え話で「もし鉛筆があまりにも短いと書きにくくないですか」といいます。長すぎる鉛筆も持ちにくいのですが小さすぎてもやはり持ちにくのです。その意味でいうとクラッシックギターサイズのボディはやや小さすぎます。そしてそれよりもさらに小さいものは全くお勧めできません。小さすぎて持ちにくいからです。ボディ選びは一般的なサイズなら問題ありません。
・弦
決定的に違うのがこの弦です。クラッシックギターはガット弦と呼ばれます。その昔は本当に動物の腸を弦として張っていたためこのような名前になりました。弦楽器は最初は全てガットだったようですね。コントラバスにもガットは使われていたようです。しかし流石に耐久度であったり、生産性であったりといったことを考慮すると今は弦楽器は鉄の弦がほとんどです。そう言った意味ではクラッシックギターの弦は特殊であると言えますね。もちろん、現在ではガットはアクリル、ビニールです。しかしこのガット弦こそがやはりクラッシックギターの音色の決め手です。鉄ではないとの理由もありアコースティックギターのようにピックを使用しません。指が基本になります。実際、私自身はクラシックが弾けません。しかしガットギターは所有しております。ある時、クラシックギターでジャズを、そしてピックを使って練習をしてみました。弦がすぐに切れてしまいます。やはりピックでは弦が絶えれないのでしょう。クラシックギターの形を少し大きくして鉄の弦を張る。当時は画期的だったように思われますがほとんどの弦楽器が鉄の弦です。ギターに鉄の弦を張ることそのものが遅れた発想だったのかもしれませんね。因みに鉄の弦、いわゆるアコースティックギターを最初に開発をしたのがマーチン、あの大メーカーなんですね。もちろん、鉄の弦も開発しています。弦の質は大きくアクリルと鉄で違うのですがもい一つ面白いのが、クラシックギターは6、5、4弦は巻き、3、2、1弦はプレーンです。クラシックギターをお手本にアコースティックギターを作ったはずなのですがアコースティックギターは6,5,4,3弦までが巻き、2,1のみプレーンです。そしてこの弦の配列を使用しているのはアコースティックギターとジャズのフラットワウンドだけです。ただしジャズギターなのでアコースティックギターと比較はできません。どうして3弦まで弦を巻きにしたのかは定かではありませんが、考察するにあたり、やはりネックの反りに対する耐久を考慮したのではないでしょうか。奏法のためにネックを僅かに長くした。ピックや音量を稼ぐために鉄弦を採用。そうなると今までネックがどうなるかはもう未知の世界ですね。実際に巻き弦は中に芯、芯線と呼ばれるものがあり、そこに巻き付けている形です。そうなりますと芯線はとても細く、実際はアコースティックギターの場合、一番細い1弦よりも3弦の芯線のほうが細いといわれています。もし3弦が従来のようにプレーンであればネックが大きく反ることになると考えたのかもしれません。ただし、現在ではとても太い弦を張ってもネックが修正できないほどそることはありません。ですので3弦までが巻き弦なのはもう伝統みたいなものです。また、ほとんどが3弦巻きでサウンドが作られているため今更3弦をプレーンにしてもサウンドが受け付けられないかもしれませんね。また実際にアコースティックギターの弦として3弦はプレーンもかなり少ないのも事実です。もし試したいならエレキギターの弦を張ることになるでしょう。ただしこれもほとんどがニッケルであり、アコースティックギターの弦のようにリン酸、いわゆるフォスファーはありませんのでまた難しいところです。
初心者の方、アコースティックギターとクラッシックギターの見わけは?となれば鉄の弦かガット弦かで見分けてほしいです。参考にしてみてください。
よろしくお願いします。